『おばけ煙突』は、つげ義春が貸本漫画家だった1958年(昭和33年)11月に若木書房『迷路1』に掲載した短編。独特のペシミズムと、全編を覆う雨の描写が印象的で、この作品を絶賛した白土三平の尽力により、後年つげはガロで絶頂期を迎えることになる。
東京のはずれの不思議な4本の煙突が舞台。見る位置によって煙突が4本が3本、3本が2本、1本に見える。中でも4番目に立てられた煙突はたたっているという噂がしきりで、それまでに掃除に上がった職人が9人が転落死を遂げていた。「たたりの煙突」として恐れられている4本目の煙突に、貧困に喘ぐ職人が1万円の懸賞金目当てのために上る。連日の雨で仕事がなく息子の医療費を稼ぐために上る決意をする。強風と大雨の中彼は煙突を掃除するが、足を滑らせて10人目の犠牲者になってしまう。家では何も知らない妻と子が、父の帰りを待っていた。