『からくりの君』(からくりのきみ)は、藤田和日郎の短編漫画作品。初出は『週刊少年サンデー』1994年47号で、短編集『夜の歌』に収録されている。執筆の動機について藤田は、忍者が好きだからとしており、また、この作品が『からくりサーカス』を描くきっかけになったと述べている。1999年にアニメ化されている(#OVAを参照)。
時は乱世の戦国時代。とある地方の領主でありながら急速に力をつけた狩又貞義の実態を探るべく、派遣された忍者の一団があった。ところが、任務の途中でことが露見してしまい、狩又の誇る精鋭忍者部隊「死なずの忍」に追われる身となる。ほどなくして、巨大な行李を背負った風変わりな娘、文渡蘭菊が伝説の忍者、加当段蔵の隠れ家を尋ねた折、追手から唯一逃れおおせて一息付いていた下忍、睚弥三郎が「加当は死んだ」と告げる。その直後、またもや死なずの忍に襲われ、ついに絶体絶命の窮地に陥った弥三郎を凶刃から救ったのは、蘭菊の行李から伸び出た巨大な刀の切先。次いで現れたのは、これまた巨大な鎧武者、太郎丸だった。蘭菊は狩又に領地を奪われ殺された武将・文渡久重の娘で、父が作ったからくり人形が狩又に悪用されているのが許せず、父の遺品である操り人形を繰り狩又を狙っていた。しかし操り人形が強くとも、それを繰る蘭菊は無防備で、蘭菊自身が狙われれば仇討ちはできない。そこで蘭菊自身の護衛を頼みに加当を訪ねたのだった。弥三郎は加当に代わり蘭菊の護衛を引き受け、再び狩又の居城へ乗り込むことになる。