『王道の狗』(おうどうのいぬ)は、安彦良和の漫画。『ミスターマガジン』1998年1号から2000年3号に掲載された。単行本は講談社ミスターマガジンKCより全6巻、白泉社ジェッツコミックス、中央公論新社より全4巻出版。明治時代中期から末期の日本、朝鮮、清を舞台に、秩父事件から日清戦争、辛亥革命までの東アジアの歴史と、それに翻弄された人々の運命を描いた。2000年に第4回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞。『虹色のトロツキー』、『天の血脈』と並ぶ安彦の「現代史三部作」の一つ。
1889年(明治22年)秋、北海道上川。明治政府による石狩道路建設のための懲役労務に従事していた自由党の加納周助と、天誅党の風間一太郎が共に現場から脱走するところから物語は始まる。加納は大阪事件に関与し重懲役九年の刑、風間は高田事件に関与し重懲役十年の刑を受け、過酷な重労働の日々を送っていた中での脱走だった。その道中、二人はアイヌ人の猟師・ニシテの助けを受けると、加納は「クワン」、風間は「キムイ」というアイヌ名を与えられ、湧別で農場を営む徳弘正輝の下に身を寄せることになる。やがて二人は徳弘にアイヌ人ではないことを見破られてしまうが、軍を追われた身だという彼の庇護を受け、アイヌの娘・タキと出会うなど平穏な生活を送る。