『松吉伝』(まつきちでん)は、みなもと太郎の漫画。「風雲児たち外外伝」の枕題が付与されている。
みなもと太郎(浦源太郎)の母方の祖父である松吉は、子どもの目から見てもただならぬ人物だった。松吉は時に、子どもの目から見ても変わった形の包丁と鉈を愛用しており、それらを用いて近所で釣ってきた魚やウナギを玄人さながらに捌いたり、どこからか木材を集めて幼い孫のためにブランコを手作りしたりと、何でもできる人物だった。そんな祖父が愛用していた包丁と鉈が実は、もともと一振の日本刀(軍刀)であったと気付くのは、源太郎が中学生になってからのことである。母曰く祖父は「剣術だって柔術だって乗馬術だって師範級。できない事は何もない」人物であったという。祖父の謎は源太郎の幼心に深く刻まれた。そんな祖父・松吉が亡くなったのは源太郎が漫画家「みなもと太郎」としてデビューする直前である、20歳になった頃。家族で祖父の遺品を整理する中、みなもとはその中に甘粕正彦の写真を見つける。写真の横には祖父が冥土へと赴いた甘粕に宛てたであろう文章が記されていた。そのことを母に問うたみなもと。だが母は、なんでもないようにサラリと「甘粕は死ぬまで松吉の親友であった人」だったのだと言い放つ。ここから、みなもとの祖父・松吉の生涯を追う物語が幕を開ける。